
花粉症は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりを主症状とする、アレルギー性鼻炎の一種です。花粉症では、これらに、目のかゆみが加わることがあります。文字通り、花粉が原因であり、通常は花粉が飛散する春から夏にかけて症状が出現・悪化します。(花粉症以外のアレルギー性鼻炎としては、ハウスダストやカビなどを原因とするものがあって、これらは、季節による症状の変動がそれほど目立たないのが特徴です。)
第2次大戦以前のわが国では、アレルギー性鼻炎はごく少数だったとされています。ところが、特に1970年代前後に経済が高度成長期に入ったのと軌を一にして、患者が激増してきました。(1990年代以降は、患者数の増加がゆるやかになったとされています。)報告によって数字は異なりますが、現在、日本人の1割から3割はアレルギー性鼻炎を有しており、その多くは花粉症であるとされています。
花粉症は、今やわが国の「国民病」といえるほど、患者数の多い病気となってしまいました。なぜこのような変化が起きたのか、まだ確定的なことは分かっていませんが、清潔過ぎる環境がアレルギー性の疾患を起こすのではないか、という説が有力になっています。免疫は、外部から侵入してきた病原体を攻撃するのが本来の役割ですが、身の周りの清潔が過ぎて細菌などの敵がいないと、免疫のシステムが、今度は花粉などを敵と認識するようになり、花粉を吸い込んだ際に過剰な反応が引き起こされて、アレルギー性鼻炎の症状が出る、とする説です。
花粉症は、気管支喘息・ペニシリンなどの薬剤に対するアレルギー・スズメバチの毒に対する反応などと並ぶ、「即時型アレルギー」の代表です。花粉がやってくると、時を置かずに「肥満細胞」が様々な生理活性をもつ物質を放出して、症状が起こってきます。
花粉症の中で最多とされているのがスギ花粉症です。第2次大戦中の過度な木材の使用(主に戦争に使う目的)によって、森林資源が枯渇の危機に瀕したため、終戦直後から、日本各地でスギの植林が奨励され、それが現在になって大量の花粉を出すようになったとされます。もっとも、地域により多少事情は異なり、たとえば北海道、特に札幌市より北では、スギ林はほとんどなく、そのためにスギ花粉症はきわめて少なく、その代わりヨモギ花粉症が見られる、といった違いがあります。
花粉症に対する予防として、マスクや密着するタイプの眼鏡を装用することが勧められます。地域や季節によっては、インターネット上やテレビなどに花粉予報が出されますので、これも参考にできます。治療としては、抗ヒスタミン剤の内服(鼻水やくしゃみに対して有効ですが、鼻づまりに対してはそれほど有効でない)や、抗ヒスタミン剤の点鼻(鼻水・くしゃみ・鼻づまりに有効だが、目のかゆみに対してはほとんど無効)、血管収縮剤の点鼻(鼻づまりに有効)などが挙げられます。点鼻薬の中には、抗ヒスタミン剤や血管収縮剤など、数種類の薬剤を混ぜているものもあります。
また、根治療法に近い治療法として「脱感作療法(減感作療法)」があります。これは、花粉が入ってきても、免疫がこれに反応しないようにしよう、というもので、長期間にわたって(数年)、月に数回程度、皮下に抗原物質を注射します。このほか、睡眠不足や過労、ストレス、さらには動物性食品の過剰摂取などバランスの悪い食生活も、花粉症の症状を悪化させるという報告もあります。このように、生活習慣や食習慣を良好に保つことは、多くの病気の予防や治療に対して、一定の寄与をしています。